4月下旬に始まった解体作業は1カ月経っても終わっていなかった。
実際に目にした解体作業は、
年老いた肉体の皮を一枚一枚、丁寧にはがしていくようだった。
それは想像以上に緻密で計画的な作業だった。
まるで、大手術を行う外科医のように。
汚れた作業着、すすけた手袋、キズだらけの安全靴、愛想笑いを排除した面構え。
それらは、
危険と隣合わせの建設現場を経験した職人の勲章のようで、
キラキラと光って見えた。